ハンドボールの試合を観ていると、「今のファウルじゃないの?」と思う場面でレフェリーが笛を吹かないことがあります。

これは見逃しではありません。**「アドバンテージルール」**と呼ばれる重要な原則に基づいた、意図的な判断です。

この記事では、レフェリーが笛を吹かない場面とその理由を、2026年版の競技規則(ルール13:2)に基づいて解説します。

アドバンテージルールとは?

アドバンテージルール(ルール13:2)は、**「反則があっても、被害を受けたチームがボール保持を続けて有利な状態にある場合、レフェリーはプレーを止めない」**という原則です。

目的はシンプル。反則をした側にペナルティを与えるために笛を吹くことで、かえって被害チームの攻撃チャンスを潰してしまうのを防ぐためです。

たとえば速攻中に軽く押されたけどそのまま走れている場面。ここで笛を吹いてしまうと、攻撃側は有利な速攻の機会を失い、9mラインからのセットオフェンスに戻されてしまいます。それは攻撃側にとって不利——だから笛を吹かないのです。

アドバンテージが適用される具体例

速攻中の軽いファウル

カウンターアタックに出た選手が軽く押されたが、バランスを崩さずにそのまま走り続けている場合。レフェリーは笛を吹かず、攻撃側が数的優位の状態で攻撃を継続できるようにします。

→ 笛を吹くと:9mフリースローからのセットオフェンスに戻り、攻撃側に不利 → 吹かない理由:攻撃側がより有利な状況(速攻)を維持している

シュートチャンス直前のファウル

バックプレーヤーが6mライン付近でシュート体勢に入ったとき、後ろから軽く押されたがそのままシュートを放った場合。

  • シュートが入れば → ゴール認定
  • シュートが外れ、ファウルがなければ入っていたと判断される場合 → 7mスローの可能性

パスカットされそうだが繋がった場面

守備側がホールディングで攻撃を止めようとしたが、攻撃側が体勢を保ちパスを出し、仲間がフリーでボールを受けた場合。攻撃が有利に続いているため笛は鳴りません。

もしパスが通らなければ、その時点でフリースロー判定になります。

アドバンテージが適用されない場面

アドバンテージは万能ではありません。以下の場面では、結果にかかわらず即座に笛が鳴ります。

場面根拠理由
明らかな得点チャンスの阻止ルール14:17mスローを与える必要がある
危険なファウルルール8:5〜6選手の安全を守るために即中断
個人罰則が必要な場合アドバンテージ後、次にプレーが切れたタイミングで罰則が適用される(遅延適用)

※ 2026年版では不正交代にもアドバンテージが原則適用されます(ルール13:2)。以前は即中断でしたが、攻撃側が有利な状況を続けている場合は流します。

7mスローとの関係

アドバンテージと7mスローの線引きは、**「シュート体勢が崩されたかどうか」**です。

  • ファウルを受けてもシュートを打てた → ゴールならOK。外れても7mなし
  • ファウルによりシュート体勢が崩された → 7mスロー

つまり、ボールと体のコントロールを維持できていたかどうかが判断基準です。「明らかな得点チャンスを奪われた」と認められて初めて7mスローになります。

レフェリーの判断基準

レフェリーは以下の4点を見て、アドバンテージを適用するか判断しています。

  1. ボール保持 — 被害チームがボールを持ち続けているか?
  2. 体勢 — 選手がバランスを保ちプレーを続けられるか?
  3. チャンスの質 — 笛を吹く前と比べて攻撃チャンスが同等以上か?
  4. 数的状況 — 速攻や数的優位が維持されているか?

「遅延罰則」を知っておこう

アドバンテージが適用されても、反則が帳消しになるわけではありません

次にプレーが切れたタイミング(得点後、スロー前など)で、反則を犯した選手に2分間退場などの罰則が「遅延適用」されることがあります。「さっきのファウルの罰則だ」とアナウンスされる場面、試合を観ていると結構あります。

試合観戦のポイント

  • 笛が鳴らない ≠ 反則を見逃した。多くの場合、意図的にプレーを流しています
  • 「遅延罰則」に注目。アドバンテージの後にプレーが切れると2分間退場が出ることがある
  • アドバンテージで流された後、攻撃が失敗した場合はフリースローに戻ることもある

アドバンテージルールを知っていると、レフェリーの判断に「なるほど」と思えるようになり、試合観戦がぐっと楽しくなります。


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