ハンドボールのコートで最もスピードが活きるポジション、それがウイングです。
左右のサイドライン際に位置し、速攻の先頭を走り、限られた角度から正確にゴールを射抜く。華やかさと職人技が同居するポジションで、左サイドの「LW(レフトウイング)」と右サイドの「RW(ライトウイング)」の2つがあります。
この記事では、ウイングに共通する役割や能力を解説したうえで、**右ウイング(RW)**にフォーカスして深掘りします。
ウイングの役割
ウイングの最大の役割は「サイドからの得点」と「速攻のフィニッシャー」です。
セットオフェンスでは、攻める方向に向かってコートの端に開いてボールを待ちます。パスが回ってきた瞬間に狭い角度からシュートを決めるのが仕事です。
また、守備から攻撃に切り替わった瞬間(トランジション)には、誰よりも早く相手ゴール方向に走り出し、ロングパスを受けてGKとの1対1を仕留めます。
さらに、ウイングにはもうひとつ大事な役割があります。**「幅を作る」**こと。ウイングがサイドに広がることでDFが横に引き伸ばされ、バックプレーヤーやピボットが中央で仕掛けるスペースが生まれます。直接得点だけでなく、チーム全体の攻撃を機能させる「スペーシング」の一翼を担っているのです。
これはLWもRWも共通です。では、右ウイングならではのポイントを見ていきましょう。
右ウイング(RW)のポジショニング
セットオフェンス時
攻める方向に向かって、コート右サイドの6mライン付近、サイドラインに近い位置が基本ポジションです。ゴールに対して約0〜15度の厳しい角度に位置するため、シュートコースは限られますが、GKの隙を突く技術で得点を重ねます。
速攻時
ボールを奪った瞬間に右サイドライン沿いを全力スプリント。味方からのロングパスを受ける「ファーストウェーブ」の走者として、最も早く相手陣に到達することを目指します。
ディフェンス時
ウイングがDFで意識すべきは、**攻撃への切り替え(トランジション)**です。相手のシュートミスやGKセーブの瞬間、誰よりも早く走り出せるかが速攻の成功を左右します。DFをしながらも「次の速攻の準備」をしているのが良いウイングです。
求められる能力
| 能力 | 内容 |
|---|---|
| スピード・瞬発力 | 速攻の第一走者として爆発的な加速力。最初の5〜10mが勝負 |
| 狭い角度のシュート | 狭い角度からGKの隅を正確に狙い打つ技術 |
| 跳躍力・空中バランス | 6mラインの隅から跳躍しながら、空中で体の向きを変えてシュート |
| ハンドリング | 速攻時のロングパスを走りながら確実にキャッチする力 |
| 判断力 | 速攻で「シュートか味方へのパスか」を瞬時に決める力 |
代表的なプレー
ジャンプシュート
6mラインから大きく跳躍し、空中からシュートを放つウイングの代名詞的プレーです。空中で体の角度を変えながらGKの逆を突くテクニックは、見た目にも華やかで得点効率が高いプレーです。
スピンシュート
ボールに横回転をかけて曲げるシュート。ポストぎりぎりを狙ったり、GKの手の届かないコースを狙う目的で使います。左利きの右ウイングが打つスピンは特に有効で、GKの反応が遅れがちです。
速攻フィニッシュ(ファーストウェーブ)
チームがボールを奪った瞬間にスプリントし、味方のロングパスを受けて得点するプレーです。GKとの1対1、あるいは無人のゴールへ走り込む場面が生まれます。速攻の成功率を大きく左右するのがウイングの走り出しの速さです。
カットイン
サイドからゴール方向に向かって中へ切れ込むプレー。DFがウイングへの対応を緩めたタイミングで仕掛けます。カットインからのジャンプシュートや、ピボットへのパスで味方を活かす展開も生まれます。
ピボットとのコンビネーション
ピボットがスクリーンをかけてDFを抑え、そのスペースにウイングが切り込む「クロス」プレーは、現代ハンドボールでは必須の連携パターンです。シュートと見せかけてピボットへパスを通す展開も強力です。
向いている人
- 足が速い人 — 速攻の第一走者に最適。陸上短距離出身の選手も少なくない
- 手先が器用な人 — 狭い角度からのシュートには手首のスナップが重要
- 体格が小さくても活躍したい人 — ウイングは大きな体格が必須ではない。170cm前後でもスピードと技術で十分戦える
- 「走る」ことが好きな人 — 試合中、常にスプリントの準備をしているポジション
- 左利きの人 — 左利きの右ウイングはシュートの角度が広がり、GKにとって読みづらいボールになる
逆に、コンタクトプレーを好む人やボールを長時間持ってゲームメイクしたい人には、バックプレーヤーのほうが向いているかもしれません。ウイングは「待つ時間」も多いポジションですが、その一瞬のチャンスをモノにする集中力が求められます。
初心者や育成年代の方にとっては、「足が速い」という一つの強みだけでチームに貢献できる入り口が広いポジションでもあります。まずは速攻で結果を出し、次第にウイングシュートの技術を磨いていく——という成長の道筋が描けるのも魅力です。
右ウイングの名手
| 選手 | 国 | 特徴 |
|---|---|---|
| ハンス・リンドバーグ | デンマーク | ドイツ・ブンデスリーガ歴代最多得点(3,100超)。オリンピック金メダリスト。ウイングのお手本 |
| ラッセ・スヴァン | デンマーク | 超人的なジャンプ力と空中バランス。SG Flensburg-Handewittで活躍。EHF殿堂入り |
| 谷藤要 | 日本 | 左利きRW。福岡大→ゴールデンウルヴス福岡を経てレガロッソ宮城で活躍 |
| 田代健流 | 日本 | 左利きRW。瓊浦高→大同大を経て福井永平寺ブルーサンダーで活躍 |
| 中田航太 | 日本 | 左利きRW。170cmとコンパクトな体格ながらスピードで勝負。レッドトルネード佐賀 |
| 出村直嗣 | 日本 | 左利きRW。筑波大からデンマーク(ヴィボーHK)を経て豊田合成ブルーファルコン名古屋で活躍 |
まとめ
右ウイングは、ハンドボールの中でも**「スピード」と「シュート精度」が最も求められるポジション**です。
- 速攻で誰よりも先にゴールへたどり着く
- セットオフェンスでは限られた角度から確実に得点する
- サイドに開いてチームの攻撃に「幅」を作る
大きな体格がなくても、スピードと技術で活躍できるのもウイングの大きな魅力です。「一瞬の判断」と「一瞬の動き」で試合を決める——その爽快感はウイングならではのものです。
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