王者ブルーサクヤ鹿児島の連覇を阻むチームがあるとすれば、それはどこか。

答えの候補は2つ。香川銀行GiraSol kagawaハニービー石川

この2チームは、ブルーサクヤを追う「挑戦者」という立場は同じでも、そのアプローチは対照的です。一方は大学インカレ12連覇のOG軍団が率いる若き攻撃集団。もう一方は日本リーグ10連覇の歴史を持つ名門の組織力。

「若さ vs ベテラン」「攻撃 vs 守備」「新興 vs 名門」——この対比軸で、リーグH女子の構造を読み解いていきます。

前回の記事ではアランマーレ富山のハマー旋風を追いました。今回は、プレーオフで直接ぶつかる可能性のある2チームの「哲学」に迫ります。

香川銀行GiraSol kagawa — インカレ12連覇OG軍団の挑戦

チーム概要

項目内容
監督亀井好弘
キャプテン下馬場燎
2025-26成績レギュラーシーズン2位
特徴大阪体育大学インカレ12連覇OG軍団中心の若いチーム

2024-25シーズンの実績

香川銀行の実力を語るうえで外せないのが、2024-25シーズンの実績です。

  • 日本選手権初優勝(決勝でブルーサクヤを34-27で撃破)
  • 国民スポーツ大会準優勝
  • リーグH 5位→プレーオフ4位

特に日本選手権決勝でのブルーサクヤ撃破は衝撃的でした。34-27の7点差。リーグ戦とカップ戦は別物とはいえ、「ブルーサクヤを倒せる」という事実を証明した一戦です。

主力選手

選手名背番号ポジション特徴
岡田彩愛#23CB(センターバック)24歳、2024-25ベストセブン、おりひめジャパン代表選出歴
藤井愛子#3PV(ピボット)2001年生、ゴール前の体を張ったプレー
和田薫チームの中核
松浦未南チームの中核

CB(センターバック、チームの司令塔)の岡田彩愛選手は24歳。2024-25シーズンのベストセブンに選出され、おりひめジャパン(女子日本代表)にも選出歴があります。若くして「チームの頭脳」を任されている存在です。

「大体大OG軍団」の意味

香川銀行の強さの源泉は、大阪体育大学(大体大)のインカレ12連覇を支えた選手たちが中心を担っていることにあります。

大学時代から「勝ち方」を知っている。チームメイトとの連携は大学時代から積み上げてきたもの。新しいチームで一から関係を構築する必要がない——この「既存の信頼関係」が、若いチームでありながら高い完成度を実現している理由です。

亀井監督の哲学

亀井好弘監督は、こんな発言を残しています。

「日本選手権で連覇をめざし、決勝で大阪体育大学との対戦を実現したい」

母校・大体大への憧憬を隠さない、情の指揮官。選手たちとの距離が近く、「一緒に戦う」スタイルの監督です。

この「情」が、若いチームの結束力を高めている。技術や戦術だけでなく、「この監督のために勝ちたい」という感情がチームを動かしている——そんな印象を受けます。

ハニービー石川 — 名門の意地、馬場敦子選手の砦

チーム概要

項目内容
旧名北國銀行ハニービー(2024年11月法人化、2025年改称)
実績17大会連続25回目のプレーオフ進出
歴史日本リーグ時代に10連覇の名門
2025-26成績レギュラーシーズン4位

17大会連続の重み

「17大会連続25回目のプレーオフ進出」——この数字が、ハニービー石川というチームのすべてを物語っています。

17年間、一度もプレーオフを逃していない。選手が入れ替わり、監督が変わり、チーム名すら変わっても、「プレーオフに出る」という結果だけは変わらない。これは組織としての強さの証明です。

日本リーグ時代の10連覇を含め、女子ハンドボール界で最も多くのタイトルを持つ名門。法人化とチーム名変更を経ても、そのDNAは受け継がれています。

GK馬場敦子選手 — 「読みとデータ」の守護神

選手名背番号年齢主要スタッツ
馬場敦子#1230歳シュート阻止率 .404(リーグ2位)

※ スタッツは2026年3月1日時点の公式データに基づきます。

香川県高松市出身、高松商業→大阪体育大学卒。パリ五輪世界最終予選代表。

馬場選手の特徴は**「読みとデータ」型のGK**です。相手シューターの傾向を徹底的に分析し、「この選手はこの場面でこのコースに打つ」という予測に基づいてポジションを取る。反射神経だけでなく、頭脳で止めるタイプのゴールキーパーです。

阻止率.404はリーグ2位。ハマー選手の.424に次ぐ数字ですが、30歳のベテランが安定してこの数字を維持し続けていることに価値があります。

さらに、ハニービーは馬場選手以外にも複数のGKを擁する「砦」体制。試合状況に応じてGKを交代させる戦術的オプションも持っています。

2024-25決勝の2点差

忘れてはならないのが、2024-25シーズンの決勝戦。ブルーサクヤに25-27で敗れた2点差の悔しさです。

ハンドボールの2点差は、最後のワンプレーで追いつける距離。「あと一歩」で届かなかった頂点。この経験は、プレーオフに向けてチームの原動力になっているはずです。

スタイル比較 — 若さ vs ベテラン、攻撃 vs 守備

この2チームを並べると、対照的な構図が浮かび上がります。

比較軸香川銀行ハニービー石川
チームの性格新興の挑戦者歴史ある名門
平均年齢若い(大学卒数年の選手中心)ベテラン中心(馬場30歳ほか)
スタイル攻撃力&機動性守備&組織力
強みの源泉大体大時代からの連携17年間途切れない「勝つ文化」
GKの特徴馬場敦子選手(阻止率.404)
ブルーサクヤ撃破実績日本選手権で34-27決勝で25-27惜敗
監督の性格情の指揮官(亀井)
プレーオフ経験浅い(2024-25が初の上位進出)深い(17大会連続)

攻撃の香川 vs 守備の石川

香川銀行は「点を取って勝つ」チーム。若い選手たちの機動力を活かした速い展開で、相手の守備が整う前に攻め切るスタイルです。日本選手権でブルーサクヤから34点を奪ったのは、この攻撃力の証明。

一方のハニービー石川は「点を取らせずに勝つ」チーム。馬場選手を中心としたGK陣と、ベテランの経験に裏打ちされた組織的なディフェンスで、相手の攻撃を封じ込めます。決勝で25-27という僅差に持ち込めたのは、守備力の証明です。

プレーオフでぶつかればどうなるか

ここから先は筆者の予想・分析です。

プレーオフのトーナメント構成次第では、香川銀行とハニービー石川が準決勝で直接対決する可能性があります。

香川銀行が勝つシナリオ

  • 前半から攻撃のギアを上げ、ハニービーの守備が整う前に得点を重ねる
  • 岡田彩愛選手のゲームメイクが冴え、多彩な攻撃パターンで馬場選手の「読み」を外す
  • 若さゆえの勢いが、名門のプレッシャーを跳ね返す

ハニービーが勝つシナリオ

  • 馬場選手が「当たり日」を迎え、香川の攻撃を封じ込める
  • ベテランの経験で試合のテンポをコントロールし、香川の若さを「焦り」に変える
  • 17大会連続プレーオフの「代々木慣れ」が、大舞台での落ち着きに繋がる

どちらが勝っても——

どちらが勝ち上がっても、その先にはブルーサクヤが待っています。

香川銀行なら「日本選手権の再現」を狙える。ハニービーなら「2点差の雪辱」を果たせる。どちらのストーリーも、プレーオフを盛り上げるドラマとして十分な説得力を持っています。

ブルーサクヤ連覇を阻む可能性

ここから先は筆者の予想・分析です。

ブルーサクヤの連覇を阻むとすれば、どんなシナリオが考えられるか。

シナリオ①:香川銀行が日本選手権の再現を果たす 34-27で勝った実績は、選手の心理に大きく作用します。「あのチームには勝てる」という自信。若さゆえの「怖いもの知らず」が、プレーオフの大舞台でプラスに働けば、連覇阻止は十分にあり得ます。

シナリオ②:ハニービーが「2点差の学び」を活かす 25-27で負けた決勝の映像を、ハニービーは何度も見返しているはず。「あの場面でこうしていれば」という反省が、具体的な戦術修正に繋がっていれば、今度は逆の結果になる可能性があります。

シナリオ③:アランマーレ富山のハマーが全員を止める 3位のアランマーレが、ハマー選手の阻止率.424を武器に上位チームを次々と撃破する——このシナリオも忘れてはいけません。


まとめ

香川銀行GiraSol kagawaとハニービー石川。

「若さと攻撃力」の香川、「経験と守備力」のハニービー。どちらもブルーサクヤの連覇を阻む力を持っていますが、そのアプローチは正反対です。

プレーオフでこの2チームが激突すれば、それ自体が「リーグH女子の今」を象徴する一戦になるでしょう。そして、勝ち上がったチームがブルーサクヤに挑む——その構図を想像するだけで、6月が待ち遠しくなります。

次回は、女子プレーオフの展望記事をお届けします。


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出典