6連覇。

2024-25シーズン、豊田合成ブルーファルコンはリーグHの頂点に立ち続けました。「もはや王座は揺るがない」——そんな空気がリーグ全体を覆っていた2025-26シーズンの開幕。しかし、レギュラーシーズン終盤、王者の足元に小さな亀裂が走り始めます。

3月末から4月にかけて喫したまさかの敗戦と、上位対決でも苦しむ姿。それは単なる取りこぼしなのか、それとも下克上の予兆なのか。

この記事では、2025-26リーグH男子レギュラーシーズンの全体像を振り返り、プレーオフに向けた「見どころの種」をまいていきます。

5月10日時点の順位表 — 上位6チーム

まずは現在地を確認しましょう。レギュラーシーズン終盤、5月10日時点の上位チームの成績です。

順位チーム試合数得失点差勝点
1豊田合成ブルーファルコン242103+28742
2ブレイヴキングス刈谷222101+18542
3ジークスター東京241914+13739
4レッドトルネード佐賀241824+15038
5大同フェニックス東海241428+6030
6トヨタ自動車東日本レガロッソ宮城241509+4030

※ 順位表は League H 公式 2026年5月10日時点のデータに基づきます。

注目すべきは、1位と2位が同勝点42で並んでいること。豊田合成は24試合を消化して3敗、刈谷は22試合で1敗。勝率だけを見れば、刈谷のほうが上です。

得失点差では豊田合成が+287と圧倒的ですが、これは「勝つときは大差で勝つ」という王者の強さの裏返し。一方で「負けるときは負ける」という新たな一面が見え始めたシーズンでもあります。

王者にほころび — 豊田合成のシーズン3敗を読み解く

24試合で3敗。数字だけ見れば十分に強い。しかし問題は、その敗戦がシーズン終盤に集中していることです。

ここでは、特にインパクトの大きかった2つの敗戦と、その直後に迎えた上位対決の内容を振り返ります。

敗戦①:3月28日 vs 大崎オーソル埼玉 ●31-32

会場: 富士見市立市民総合体育館 スコア: 豊田合成 31 - 32 大崎オーソル埼玉(1点差)

シーズン初黒星は、下位チームとのアウェイゲームで生まれました。

前半を15-16の1点ビハインドで折り返した豊田合成は、後半に入っても追いつけず、最終的に31-32で敗戦。1点差という僅差ではありますが、「王者が下位に足をすくわれた」という事実はリーグ全体に衝撃を与えました。

この試合で見えた課題は、クロージング(試合終盤の締め方)の甘さです。残り5分で同点に追いついたものの、最後のポゼッション(攻撃権)で得点できず、逆にカウンターを許してしまいました。

敗戦②:4月29日 vs レッドトルネード佐賀 ●28-33

会場: TYK体育館(多治見市総合体育館) スコア: 豊田合成 28 - 33 レッドトルネード佐賀(5点差完敗)

これが最も衝撃的な敗戦でした。

5点差——ハンドボールにおいて、これは「たまたま」では説明できない差です。佐賀は前半から積極的なディフェンスで豊田合成のセットオフェンス(相手の守備が整った状態で攻める形式攻撃)を封じ込め、速攻で効率よく加点。後半に入っても豊田合成は流れを取り戻せませんでした。

特に目立ったのが佐賀のGK陣の活躍です。後述しますが、佐賀は二枚看板のゴールキーパーがこのシーズン、リーグ屈指の数字を残しています。

直後の上位対決:5月3日 vs ジークスター東京 ◯33-32

会場: 非公開 スコア: 豊田合成 33 - 32 ジークスター東京(前半12-15からの逆転、1点差)

佐賀戦の完敗からわずか4日後、今度は3位ジークスター東京との直接対決。結果は勝利でしたが、内容は「王者の安泰」とは程遠いものでした。

前半を12-15と3点ビハインドで折り返し、後半21-17と巻き返しての辛勝。勝ち切る力はさすがですが、前半の入りの悪さは佐賀戦から改善されておらず、2試合連続で前半にリードを許す展開が続いています。

3敗+薄氷の勝利が示すもの

シーズン3敗という数字自体は立派です。しかし、終盤の流れを見ると不安が残ります。

  • 大崎戦(●1点差):クロージングの甘さで取りこぼし
  • 佐賀戦(●5点差):相手の戦術的準備に対応できず完敗
  • 東京戦(◯1点差):前半の入りが悪く、辛うじて逆転

つまり、試合の入りと終わりの両方に課題を抱えている。シーズン序盤〜中盤は圧倒的な個の力でカバーできていたものが、終盤戦で相手の研究が進むにつれ、ごまかしが効かなくなってきた——そう読み取ることができます。

ここから先は筆者の分析・予想を含みます。

プレーオフという短期決戦では、「入りの悪さ」は致命傷になりかねません。一発勝負で前半3点ビハインドを背負えば、追いかける側の精神的負担は計り知れない。豊田合成がこの課題をどう修正してくるかが、プレーオフ最大の注目ポイントの一つです。

刈谷の異常な安定感 — そして少ない試合数の意味

ブレイヴキングス刈谷の成績を改めて見てみましょう。22試合21勝1敗、勝点42

敗戦はわずか1つ。勝率.955は驚異的な数字です。しかも、その1敗も僅差での惜敗。刈谷は今シーズン、ほぼ完璧なレギュラーシーズンを送ったと言っていいでしょう。

なぜ22試合なのか

ここで気になるのが試合数です。他の上位チームが24試合を消化しているのに対し、刈谷は5月10日時点で22試合。日程の偏りにより、シーズン終盤は試合間隔が空く期間がありました。

試合間隔の長さは吉と出るか、凶と出るか

ここから先は筆者の分析・予想を含みます。

他チームが毎週のように試合をこなしている中、刈谷は相対的に試合間隔にゆとりがあります。これには両面があります。

プラス面:

  • 主力選手の疲労回復・コンディション調整に余裕がある
  • 怪我人の復帰が見込める
  • 対戦相手の映像分析に時間を割ける

マイナス面:

  • 連戦で培われる実戦感覚やリズムが得にくい
  • チームとしての「勝ちグセ」を維持する工夫が必要
  • プレーオフの独特な緊張感に、試合勘で劣る可能性

刈谷がこの日程的な余裕をどう活かしているかは、プレーオフでの立ち上がりに表れるはずです。

追走する3位・4位 — ジークスターと佐賀の脅威

ジークスター東京(3位:19勝1分4敗)

首都圏を本拠地とするジークスター東京は、今シーズン安定した成績を残しています。4敗はいずれも上位チームとの対戦で喫したもので、「格下に取りこぼさない」堅実さが光ります。

1つの引き分けを含む戦績は、接戦に強いチームであることを示しています。プレーオフのような一発勝負では、この「負けにくさ」が大きな武器になるでしょう。

レッドトルネード佐賀(4位:18勝2分4敗)

そして、豊田合成に5点差の完勝を収めた佐賀。このチームの最大の武器は、GK(ゴールキーパー)の二枚看板です。

選手名主要スタッツ数値
小峰大知7mスロー阻止率.433(43.3%)
中村光シュート阻止率.376(37.6%)

※ スタッツは2026年3月1日時点の公式データに基づきます。シーズン終盤のデータは未反映の可能性があります。

7mスロー(ペナルティスロー)の阻止率.433は、リーグでもトップクラスの数字です。通常、7mスローは「打つ側が有利」とされるシチュエーションですが、小峰選手はその常識を覆すセーブ率を誇っています。

また、中村光選手のシュート阻止率.376も優秀です。ハンドボールのGKは一般的に阻止率.300(30%)を超えれば「良いGK」と評価されるので、.376は「非常に良い」レベルと言えます。

この二人が試合ごとに交代しながら高いパフォーマンスを維持できるのが佐賀の強み。相手チームからすれば、「どちらが出てきても止められる」というプレッシャーは相当なものでしょう。

プレーオフへ — 3つの問い

レギュラーシーズンの結果を踏まえて、プレーオフに向けた「3つの問い」を投げかけて、この記事を締めくくります。具体的な予想は今後の記事に譲りますが、観戦のときにこの3つを頭に入れておくと、試合の見え方がぐっと変わるはずです。

問い① 豊田合成は「入り」を修正できるか?

レギュラーシーズン終盤に露呈した前半の失速。短期決戦のプレーオフで同じ展開になれば、逆転する時間は限られます。王者がどんなゲームプランで臨むのか、試合開始直後の5分間に注目です。

問い② 刈谷は試合間隔の空きを克服できるか?

実力は折り紙付き。しかし、他チームより試合数が少ない中でプレーオフの強度に即座に対応できるかは未知数です。初戦の立ち上がりで、刈谷の選手たちがどれだけ「試合モード」に入れているかを見てください。

問い③ 佐賀のGK陣は、大舞台でも止め続けられるか?

レギュラーシーズンで驚異的な数字を残した小峰・中村の二枚看板。しかし、プレーオフは独特の緊張感があり、シューターも「絶対に決める」覚悟で打ってきます。大舞台でこそ真価が問われるGKの仕事に注目です。


まとめ

2025-26リーグH男子レギュラーシーズンは、「6連覇王者・豊田合成の足元が揺らぎ始めた」シーズンとして記憶されることになるでしょう。

同勝点で並ぶ刈谷、虎視眈々と上位を狙うジークスター東京とレッドトルネード佐賀。プレーオフは、近年まれに見る混戦模様になりそうです。

次回の記事では、刈谷の「双頭体制」——チームを支える二人のキーマンの正体に迫ります。お楽しみに。


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