ハンドボールの試合を観ていると、守備の6人がゴール前にずらっと横一列に並んでいる場面をよく見かけますよね。あれが「6-0ディフェンス(ろくぜろディフェンス)」と呼ばれる守備の基本形です。

「数字が並んでいて難しそう…」と思う方もいるかもしれませんが、6-0 の意味はシンプルで、6人が並んで、前に飛び出す人が0人という配置を表しています。全員がゴール前に構えて、シュートコースを体で塞ぐスタイルです。

まず「立つ位置」から — なぜ等間隔が大事なのか

6-0 ではディフェンス6人が、ゴール前の6mライン上に等間隔(隣との距離は約1.5〜2m)で並びます。

6-0ディフェンスの配置

ここで「等間隔」を守ることがとても重要で、間隔が広がると相手にそのスキマを通してパスを通されてしまいます。では、それぞれのポジションに何をさせるかというと、

  • センターの2人(ゴール正面)はシュートの一番危険なコースを体で塞ぐ
  • サイドの2人(両端)はウイング(外側のアタッカー)にパスが渡らないよう位置取りする

役割がはっきり分かれているので、初めて守備の連携を覚えるチームにも取り組みやすいんですよね。

ボールが動いたら全員で動く — スライドの考え方

6-0 の肝は「スライド」です。相手がボールを左右にパスで動かしてくると、ディフェンス全体もそれに合わせて横にずれていく動きのことです。

「ボール1個が動いたら、全員が0.5〜1歩ずつ同じ方向へ動く」というイメージで、これによってどこにパスが来ても必ずディフェンダーが目の前にいる状態をキープします。

スライドで特に気をつけてほしいのが「隣との距離」です。移動に集中するあまり間隔が広がってしまうと、すぐにスキマを突かれます。隣の選手との距離感を常に意識しながら動くことが大切です。

また、このとき「行く!」「カバー!」「スイッチ!」のような短い声かけをしながら動くと、チームの動きがぐっとそろいます。ぜひ習慣にしてみてください。

場面ごとの対応 — ここが実戦で問われる

ポジションとスライドを覚えたら、次は「どんな攻撃をされたらどう動くか」です。6-0 でよく問われる場面を3つ見ていきましょう。

バックプレーヤーの遠目からのシュート

バックプレーヤー(後衛、主に9mライン付近から攻めてくる選手)が遠くからシュートを打ってくるとき、慌てて飛びつくのはNGです。

理想の対応は、9mライン手前で両手を高く上げて構え、シュートのテイクバック(腕を引く動作)が始まった瞬間にジャンプしてブロックすることです。GK(ゴールキーパー)とは事前に「このコースはGKが担当する」と決めておくと、二人で重複することなくシュートを封じられます。

ピボットへの対応

ピボットとは、ゴール正面付近でどっしり構えて、ディフェンスの内側に潜り込もうとする選手のことです。ここにフリーでパスが渡ると、ほぼシュートが確定してしまうので、受け取らせないことが最優先です。

受ける前から半身入れて「受けにくい体勢を作る」→ 万一受けてしまったら両サイドのDFで挟み込んでシュートモーションを止める、という2段構えで対応します。ただし押し出し・ホールディングになる反則は避けてください。体を当てる位置と力加減が大事です。

ウイングへの対応

ウイング(外側サイドから攻めてくる選手)にパスが渡ると、角度の難しいシュートを打たれます。そこでサイドのDFが、6mと9mの間のあたりで少し前に出て「パスコース自体を切る」ポジションを取ります。

それでもウイングがボールを持ってしまったときは、GKと二人で「このコースは自分が、あのコースはGKが守る」と役割を分担してシュートを迎え撃ちましょう。

こうなると失点しやすい — よくある失敗3パターン

守備をやっていると、気づかないうちにやってしまうミスがあります。知っておくだけで対策できるので、チェックしてみてください。

間隔が広がってしまう — ボールサイドを意識するあまり、逆サイドのDFが取り残されてしまうパターン。対策は「ボール側の選手が圧縮したら、逆サイドも0.5ステップ寄せる」を習慣にすることです。

個人で頑張ってしまう — 連携を取らず自分一人でマークしようとすると、チグハグになります。「ピボットは基本センターDFがマーク、はがれたらサイドDFが補う」のようにチームで優先順位を決めて言葉にしておきましょう。

プレッシャーが弱い — 構えているだけで怖くないと、相手は余裕を持ってシュートを打てます。ボール保持者の利き手側に半身をズラして近づき、「打てるコースを片側に限定する」だけでGKがセーブしやすくなります。

世界トップはどう使っているか

デンマーク男子代表は世界選手権4連覇(2019・2021・2023・2025)を達成していますが、彼らは 6-0 を基本としながら、相手に強力なセンターバックがいると判断したら 5-1 や 3-2-1 へ切り替えます。「基本をベースに、相手に合わせて変える」というのが世界標準の使い方です。

EHF EURO 2024 で優勝したフランス男子代表も 6-0 が軸。ただしフランスの特徴は、個の身体能力を活かした一対一の守備強度です。システムだけでなく、それを動かす選手の質も大事なんですよね。

練習でどう身につけるか

6-0 はただ並ぶだけでなく、動きながら間隔を維持するのが難しいです。段階的に積み上げていくのがおすすめです。

  • 基礎(約30分): ポジション確認(10分)→ 左右スライドの反復(10分)→ ブロック姿勢の練習(10分)
  • 実戦(約35分): 3対3での挟み込み確認(15分)→ 6対6でフォーメーション全体を動かす(20分)
  • 振り返り(約15分): 練習や試合の映像でDFラインの位置を確認。「スライドできていたか」「間隔は?」を言語化する

映像振り返りは地味ですが、自分の守備を客観的に見る習慣がつくと、上達のスピードが一気に上がります。

まとめ

6-0 は「基本」と言われますが、やればやるほど奥が深い守備です。間隔・スライド・連携・ピボット対応、どれか一つが崩れても失点につながります。

まずはスライドと声かけを徹底することから始めてみてください。それができてきたら、次のステップとして 5-1 ディフェンス(センターバックに前に出てプレッシャーをかける形)に挑戦すると、相手に応じた使い分けができるようになります。

参考文献